いつも、いつだって葵は俺から離れていく。

『……死ぬの』

頭を真っ白にさせるには十分すぎる言葉だった。大きな鈍器で殴られたかのような強い衝撃を受けて、思考がストップした。

なに、言ってんだ……?

しばらくその場から動けなくて、葵が俺に言い残した言葉が何度も頭でループする。

やっと動けるようになって葵のあとを追いかけたけど、もうどこにも姿は見えなかった。

無事に帰れたのか?

そんなことすら考える余裕がないほど、激しく動揺していた。

そっからどうやって家まで帰ったのか、そのあとどうしたのか、記憶が定かではない。

疲れきっていたはずなのに頭が冴えて眠れず、ほぼ不眠で一夜を明かした。

なにかの冗談だよな……?

葵が死ぬなんて……。

だって、ありえないだろ。

なんでだよ。

バクバクバクバク、変にたかぶる神経。眠いはずなのに昼間も一睡もできず、なにもする気が起こらない。

あれはウソだったんじゃないか。

時間が経てば経つほど、幻のように思えて現実味がなくなってくる。