一生に一度の「好き」を、全部きみに。


「あは、花菜メイクが崩れてるよ」

花菜を悲しませたくない。笑ってほしいから、私は笑った。とびっきりの笑顔で。

すると花菜も察してくれたのか、フッと頬をゆるめる。

「葵だって鼻水出てるからね?」

「え、ウソ!? やだっ!」

「あはは、ウソだよ!」

「もう、花菜ってば!」

ふたりして泣いたから顔はぐちゃぐちゃ。そのぐちゃぐちゃな顔でふたりして思いっきり笑った。

花菜といると心が落ち着く。どうすればいいか答えはまだ出ないけれど。

それでも今は咲に会いたい。

「よしっ、じゃあいこっか。黒田が駅で待ってるらしい」

スマホを確認した花菜がやれやれと苦笑する。

お会計を済ませて外に出ると、一気に暑さが蘇った。

夕方、陽が沈みかけているというのに汗をかく。

「あ、黒田……」

そう言いかけた花菜の足と言葉が止まる。

同時に花菜の横顔が強張った。

視線は一点に集中している。

花菜の視線の先を追うと、駅前の待ち合わせスポットである本屋の前で、ふたりの女の子と楽しそうに笑っている翔くんの姿。