「ウソじゃ、ない……?」
明らかに動揺している瀬尾さん。
「病気……? あんたが? 心臓の?」
うわ言のように繰り返し、信じられないと言いたげ。
「咲も……先生たちもみんな知ってる。だから私を気遣ってくれるんだよ。体育の授業で走れないのも、そのせい。楽してるわけじゃないから、それだけはわかってほしい」
「……っ」
瀬尾さんはすっかり大人しくなってしまい、目を伏せてうつむいた。
「そんなこと、いきなり言われたって……」
「そうだよね。戸惑うよね。でも、もし、私が倒れたことで瀬尾さんが責任感じてるなら……それはちがうから」
「は、はぁ? 責任なんて感じるわけないでしょ……!」
「だから、もしもの場合って言った。私の責任だから気にしないで。それを言いたかっただけだから。じゃあ」
そう言って踵を返す。
やればできるじゃん、私。
正直怖かったけど、思ってることは言えた。
「待ちなさいよ……」
低くくぐもった声がして足が止まる。