咲は律儀にノックしてから保健室のドアを開けた。
中はシーンとしていて人の気配はない。
「誰もいないみたいだな。とりあえず消毒するぞ」
腕を引かれながら保健室に足を踏み入れる。
独特な匂いや並んだベッド、置いてある物品が病院と似てて、それだけで少し気後れしてしまう。
「勝手に入っていいのかな?」
「いいだろ、ケガしてんだから」
「ケガっていうほどのもんじゃないよ」
針がちくっと刺さっただけだよ。
「いいからこっちに座れ」
私を丸椅子に座らせると、咲は慣れない手つきで棚の上の物品をあれこれ見て回る。
その顔は真剣で思わず見惚れてしまいそうになる。
「体育祭の種目決めのとき、助けてくれてありがとう」
「どうしたんだ、急に」
棚を眺めていた咲の視線がこっちに向けられた。
「別に礼を言われるようなことはしてない」
「でも、リレーなんて出るキャラじゃないでしょ咲は」
「葵の中でどんなキャラなんだよ、俺は」
小さく噴き出す横顔に胸がキュンと弾む。
顔が熱くなって、思わず手でパタパタ仰いだ。



