目を輝かせて見ている緋色を、泉はニコニコと見つめていた。その視線に気づいたのは少しの時間が経過した後だった。


 「あ、ごめんなさい………集中して見ちゃって。」
 「………ねぇ、緋色ちゃん。この教会に見学に行ってみようか。ドレスの貸し出しとかもやってるみたいだし。」
 「え、いいの?」
 「もちろん。俺も早く緋色ちゃんと結婚式挙げたいしね。」
 「………うん。見学してみたい。この大聖堂見てみたい!」
 「わかった。じゃあ、決まりだね。俺が予約しておくから。」
 「………ありがとう、泉くん。」



 緋色はパンフレットを抱きしめながら、泉にお礼を言うと、泉は頬を染めながら「いいんだよ。」と、微笑んでくれた。


 2人の結婚指輪はもう決まっていた。
 望と話をした後、2人でネットを見ていて気になったものがあったのだ。泉は、どうせならば宝石がついているものがいいんじゃないかと言っていたけれど、緋色はシンプルな物がいいと伝えた。理由は、婚約指輪を着けるときに、結婚指輪と重ねたいからだった。婚約指輪は普段使わない人が多いと聞くけれど、緋色は使っていきたかった。
 目に見える事で、彼との出会ったときの思いを忘れたくないと思ったのだ。
 あの時の出会いと彼の言葉がなければ、今の緋色はいないのだ。
 ただ漠然と生きて、決められた結婚に従う人生だっただろう。