17話「楽しみと疑問」




 泉は不思議な人だ。

 自分と同じように、彼の昔の事を緋色は知らない。望との話の時も彼は何かを隠しているようだった。
 それが何なのか。気にならないわけではなかった。本当の事ならば泉から話して欲しいと思っている。

 けれど、望と同じように何か理由があるのだろうと緋色は思っていた。そうでなければ、彼が秘密にする理由はないのだから。
 きっといつかは話してくれる。
 そう信じて、緋色は彼を待つことに決めた。

 そう余裕を持てるのは、望に話を聞きに行った時の彼の優しさや思いが緋色に伝わったからだった。
 今まで以上に、緋色は泉が大切な人なのだと思うようになっていった。