「そして、思い悩んだ茜が考えに考えた事。それが、離婚だったんだ。」
 「…………そんな………。」
 「『あなたは優秀で素敵な人。だから、貴方の血を継いだ子どもを残すべきだわ。それは、私でなくても出来る。だから、別れましょう。』と、涙を溢して必死に訴えられたのを今でも覚えているよ。」
 「…………それでは、あの手紙は。」
 「あぁ。そうだよ。そう私に言った後に家を出ていった彼女が私に残したものだ。」


 望は遠くを見る目で、庭を眺めながらそう言った。望の目には、その当時の映像が映し出されているのだろう。とても、辛い表情だった。


 「その後、私は必死に彼女を探して見つけ出して説得したよ。そして、2人で養子という道を選んだ。初めて緋色がこの家に来た時、茜は不安そうにしながらも、とても幸せそうだった。それを見た瞬間、この選択でよかったんだと思えたんだよ。………だがら、緋色が私や茜の元に来てくれたのには、とても感謝しているんだ。大きくなればなるほど、養子で家に馴染むのは難しいというのに、おまえは乗り越えてくれた。そして、沢山思い出を作ってくれた。だから、茜も最後の最後まで緋色が大好きだったし、今でもそのはずだ。」