「………わ、私…………。」
 「緋色ちゃん。大丈夫、大丈夫だよ………。楪さんも俺もちゃんといる。………そして、君が大好きだよ。」
 「………泉くん。………お父様。」


 緋色の小刻みに震える体を泉が肩を抱いてくれる。そして、優しく微笑みながら緋色の顔を見つめていた。望も心配そうにしながらも、微笑んでくれていた。

 その表情を見て、緋色は少し落ち着きを取り戻し、大きく息を吐いた。


 「大丈夫です。お父様。お話を聞かせてください。」


 緋色がしっかりとした口調でそう言うと、望は頷くと、昔の話をゆっくりと話し始めた。


 「緋色が楪家に来てくれたのは、おまえが9歳の時だ。きっと、記憶をなくしているだろうけれど、おまえはとてもいい子だったよ。きっと、私たちに好かれようと必死だったんだろうね。少し、試し行動で私たちを困らせたりもしたけれど、それでも、緋色が私たちを信用してくれているからだと思って嬉しかったんだよ。」
 「お父様………。」
 「何故、私たちが養子をとることにしたか。それは、緋色も大体わかるだろう………。私たちには子どもが出来なかった。それは茜の体が子どもが出来にくいのが原因だとわかってね。彼女はとてもショックを受けていたんだ。」
 「……………お母様が………。」
 

 初めて聞く話に、鼓動がドクンドクンッと激しく鳴っている。
 自分の知らない幼少期。そして、両親の想い。それを知り、心にこみ上げてくるものがあった。