庭が見える大きな窓が開放感を感じ、茶色の皮のソファやアンティークの家具が並ぶおしゃれな部屋だ。
 中央の数人用のソファには泉と緋色。そして、1人用のソファには望が座った。望の席からは中庭の緑や花たちがよく見える。望の特等席だった。


 「それで、当然話とは何かな。結婚式の話しでは………なさそうだな。」

 
 望は、2人の表情や雰囲気を感じとり、良い話ではないとわかったようだった。

 緋色は俯きながらも、キュッと手を握りしめて、ゆっくりと顔を上げた。もちろん、まっすぐな視線の先には父がいる。
 隣には、何かあれば助けてくれる彼がいる。それが、緋色の背中を押してくれるのだ。


 「お父様。今日はお時間ありがとうございます。………ずっと話さなければならないことがあると思っていました。けれど、お父様との関係が変わってしまうのではないかと、怖くて前に進めないでいたのです。けれど、結婚をするという節目で、それを変えたいと思ったのです。お父様の事を知りたいと………。だから、本当の事を教えてほしいのです。」
 「…………それは、あの手紙の事だね?緋色。」