15話「真実を知る時」






 泉はその日の予定を全てキャンセルをして、緋色の父である望と会う約束を取り付けてくれた。
 
 父の事も母の事も知らないといけないと思いつつもずるずるとここまで来てしまった。
 父である望に大切に育てて貰い、今の自分があるのは緋色にもわかっていた。
 けれど、詳しい事を知ってショックを受けるのが怖かった。これ以上、本当の父の姿を知ってしまったら、自分はどうすればいいのか、そんな事ばかり考えては、何もしないで過ごしてしまったのだった。

 それなのに、泉に「ダメだ。」と言われ、「楪さんに会いに行こう。そして、話を聞こう。」と手を握ってもらい、そんな俯いた考えは少しずつ消えていった。
 それは、彼が一緒だからという事もあるだろう。

 けれど、1番の理由は泉という存在の大きさだと緋色は気づいていた。
 もし父の真実を知り、緋色が耐えられなくなってしまっても泉が変わらずに傍に居てくれる。
 その事が、緋色を動かしたのだ。