そして、会社にも結婚する事を伝えた。
 上司と仲がいい先輩の愛音だけは喜んでくれたけれど、他の人たちは「社長令嬢の結婚」と言うことで、あまり興味はないようだった。もちろん、あの「松雪泉」というのは内緒だ。
 そして、泉は楪家に婿に入ってくれた。始めは空手家としても名前を変えようとしていたけれど、それも少し落ち着いてから考えるという事だった。


 それからすぐに緋色は泉の家に引っ越した。
 泉が「早く一緒に住もう。」と、いろいろ準備をしてくれたのだ。そのお陰で、婚約が決まってから1ヶ月もしない頃には泉と一緒の生活がスタートしていた。
 始めはお客さんのようによそよそしくなってしまっていたが、今では自分の家として過ごせていた。
 それも、泉のお陰だった。




 「おはよう。泉くん?おーい、朝だよー。」
 「ん………もう朝………?あと少し………。」
 「それさっきも聞いたよ。」


 泉と緋色は大きなベットで一緒に寝ている。
 今でも少し恥ずかしい気持ちがある緋色だったけれど、誰かと一緒に眠る安心感とぬくもりを感じてしまうと、もう一人で寝るのは寂しくなってしまいそうなぐらいだった。
 朝が弱い泉を起こすのは、いつも緋色の役目だ。今日は休日なので、いつもより遅い時間だったけれど、予定もあるのでそろそろ起きなければならない。それに、泉は朝にもトレーニングをしている。1階にトレーニングが出来る部屋があり、いつも1時間ぐらい体を鍛えているのが日課のようだった。