その後は、少しぎくしゃくした雰囲気になったけれど、彼の書斎や書庫でいろいろな本を見ているうちに、元の雰囲気に戻っていた。彼の言った通り本当に趣味は合っていた。本屋に立ち寄った時も感じた事だが、本棚にずらりと並ぶものは、緋色が読んだものや、気になるものばかりだった。

 「緋色ちゃん、そろそろ帰った方がいいかもしれないね。」
 「え………あ、もうこんな時間なんだ。」

 泉に言われて時計を見ると、結構な時間が過ぎていた。

 「ごめんね、夕飯も食べないでここに居て。」
 「ううん。楽しかったから大丈夫だよ。今日は誘ってくれて、ありがとう。」
 「いいえ。次はいつかな。………早くここに来て欲しいよ。」
 
 そういうと、泉は緋色の頭をポンポンと撫でた。
 きっと、ここに住むまではあっという間の事だろう。そして、彼の夫婦になるのも。

 「遅いから送っていくよ。」
 「近いから大丈夫だよ。」
 「…………っっ………ダメだっ!!」


 緋色が椅子に置いてあったバックを取ろうとした。その手とは反対の手を、泉に強く掴まれ緋色は体がぐらついてよろけてしまいそうになった。それを泉が支えてはくれたけれど、そのまま彼の腕の中にすっぽりと入ってしまう。そして、苦しいほどに強く抱きしめられた。緋色を逃がさないというほどに、力強く押さえつえている。