「そんなに硬くならないで。まだ、緊張しちゃうんだね。」
 「だって………まだ、泉くんとは会ったのは2回目だよ?」
 「そうだったね………。そんな感じはしないけど。」
 

 泉が言う通り、彼と会ったのが2回目だというのは信じられない思いだった。電話を毎日していたからかもしれない。
 けれど、彼とは何か深い繋がりがあるような気がしていた。


 「今だに信じられないよ。君が俺のものになるなんて……。」
 「それは、私も同じだよ。結婚するんだね。」
 「そうだよ………。だからって、急がなくていいからね。ゆっくりお互いを知っていこう。聞きたいことがあったら聞いて、思ってることがあったら話していこう。」
 「…………。」


 結婚したら、何事も話し合って2人で助け合って生活をしていくのだ。
 気持ちを伝えて、お互いを知っていく。

 それならば………彼に聞きたいことがある。
 今のうちに泉に聞いておいた方がいいのではないか。
 いや、知りたいと緋色は思っていた。


 彼が優しくそう言ってくれたのだ。
 今がチャンスかもしれない。

 そう思って、緋色は口を開いた。


 「い、泉くん。」
 「ん?どうしたの………?」
 「泉くんに聞きたいことがあったの。どうしても気になってたこと。」
 「…………うん。どんな事?」


 泉は優しく微笑みながら緋色を見つめていた。
 彼に聞いてもいい事なのだろうか。
 自分の勘違いだったらどうしよう。
 そう思いながらも、緋色は思い切って口を開いた。



 「泉くんは………私が記憶がなくなる前にも、私に会っていたの?私が知らない、私を知ってる?」

 
 
 ずっとずっと気になっていた事を、彼の腕の中でやっと問う事が出来たのだった。