「緋色ちゃんに見て欲しい場所があるんだけど………よってもいいかな。」
 「うん。泉くんに任せるよ。」


 そう返事をしたけれど、もう少しで緋色の自宅へ到着する道だった。今日のデートはもうおしまいなのかと、少し残念に思っていただけに、緋色は嬉しくなった。



 「ここだよ。」
 「え…………ここ…………?」


 泉が車を停めた場所。
 そこには、小さいけれど綺麗な2階建ての家があった。塀が高くて中はよく見えなかったけれど、庭もあるようだった。駐車場にも厳重な扉がついており、泉が先ほどリモコンのようなもので、扉が開けていた。


 「ここ、俺の家なんだ。」
 「泉くんのおうち………。」


 緋色はそれを聞いて驚いてしまった。
 まさか、すぐに自宅に案内されるとは思ってもいなかったからだ。


 「ちょっ………ちょっと待って!私、今日は心の準備が出来てないし。それにお土産のお菓子とかも持ってきてないわ。………挨拶の言葉も考えてないし。」


 あたふたと焦る緋色を見て、1度ポカンとした後、はははっと泉は笑った。


 「ごめん。勘違いさせたね。ここは実家じゃなくて俺の自宅だよ。ここに一人暮らししてるんだ?」
 「こ、ここで一人暮らし!?」
 

 緋色はご両親に挨拶するのだと思ってしまい、焦っていたけれどそれは早とちりだったようだ。安心しつつも、彼の言葉に更に驚いてしまう。
 白くて綺麗な家が彼の物だというのだ。自分より若い彼がすでに家を持っているというのは驚くしかない。