11話「質問」




 宝石はこんなにも美しかっただろうか。
 左手で華やかに輝く指輪を見て、緋色は小さく微笑んでしまう。

 プロポーズを受けることは、知らない間に心のどこかでもう決めていたのかもしれない。
 いつかは結婚しなければいけない。好きな人などいない私は、きっと誰かが決めた人を暮らすのだろう。そう覚悟して生きてきた。

 だから、誰と結婚しても同じなのだ。



 そんな風に始めは思っていた。
 けれど、どうしてだろうか。
 隣にいる泉と出会ってから、一緒に過ごす時間が楽しくて、結婚したらどうなるのだろうかと幸せな未来を想像できた。
 結婚してからでも恋は出来るのかもしれない。
 そんな風に思えたのだ。



 「その指輪、気に入ってくれた?」
 「え………うん…………。もしかして、変な顔してた?」
 「変な顔ではなかったけど、微笑んでくれてた。」


 嬉しそうに微笑みながら運転をする泉。
 彼は私の婚約者になった。
 出会って1週間で結婚が決まり、あっという間に正式に夫婦になるのだろう。そう思うと不思議な気持ちだった。少し前の緋色には想像も出来ない事だった。