今度は泉から体を離す。

 けれど、鼻と鼻とかぶつかってしまいそうなほど近い距離で、緋色は頬を染めてしまう。だが、泉のまっすぐな視線を感じ、目を逸らす事が出来ない。


 「僕は緋色ちゃんがいいんだ。松雪泉はあなたを選んだ。周りの人だって、みんな綺麗だとか可愛いって言ってるはずだよ。緋色ちゃんが気づいてないだけだ。………それでも、まだ見られることに、慣れなくて気になるのなら俺を見てて。俺は緋色ちゃんが愛おしいって思うのは絶対だから。」


 そういうと、泉はニッコリと微笑んで「よしよし。」と頭を撫でてくれる。
 何故そんな事をしてくれるんだろう、と思ったら自分の頬に温かい感触があった。そこで、やっと、泣いているのだと緋色はわかった。


 「あれ………私…………。」
 「きっと、緊張の糸が切れちゃったんだね。我慢させてごめんね。」
 「そんな………っっ………!!」


 頬や目の下についた涙を拭こうと手を伸ばしたが、それより先に泉がペロリと頬を舐めたのだ。
 緋色はあまりの事に驚いて、体を離してしまう。

 すると、悪戯っ子のように緋色はニヤリと笑った。