泉の車に乗り込むと、緋色はホッと息を吐いた。
 すると、ふわりと甘い香りを感じたと同時に、緋色は彼の腕に閉じ込められていた。
 泉が運転席に乗り、緋色を抱き寄せたのだ。体が彼に引き寄せられる。甘い香りと彼の温かさを感じながら、ただ驚くことしか出来ない。


 「い、泉くん…………?」
 「ごめん、緋色ちゃん…………。あなたはまだ見られることに慣れてないのに、大丈夫だからと何の配慮もしないで。………いろんな人の視線、気になってたよね。」
 「………泉くん。」


 泉の声が耳元で聞こえる。

 ドキドキしながらも、彼の悲しげな声に緋色は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
 泉が悪いわけではない。
 自分の自信のなさがいけないのだ。


 「泉くんが悪い訳ではないから。でもね、どうして、泉くんみたいな人が私を選んでくれたのか、わからなくて。もっといい人はいたはずなのに………。ネタになる出会い方かもしれないけど、でもそれだけで私と結婚するのは勿体ないって思えて…………。」



 緋色は泉の体を押して、彼から離れようとする、けれど、彼に強い力でまた胸の中に収まってしまう。



 「泉くん?………ねぇ、離して………。」
 「離したくない。」
 「…………どうしたの?」
 「俺は、緋色ちゃんは可愛いって思う。隣に居てくれて幸せだって思うし、それだけで笑顔になれるんだ。………緋色ちゃんだってわかるだろ?俺がずっと笑っているの。出会って1週間しか経ってないのに、好きだって言ったら、なんだか軽い気持ちみたいだけど………どんどんあなたに惹かれてる。知れば知るほど、君に魅了されてるんだ。」
 「…………泉くん…………。」