「あ………あれって、泉くん?」
 「ん?あー………あの撮影って今月号だったのか。そうだよ、俺です。」
 「雑誌の表紙………。」
 「だから、俺は結構有名人だって言ったのに。」
 「そうだけど………。」


 緋色は泉が表紙の雑誌を手に取り、眺める。それは、スポーツ雑誌のようだが、ジャージや、シューズ、オフのコーデなどが載っていた。若い年齢のスポーツマン向きの雑誌のようだった。
 そこに空手家の松雪泉として巻頭表紙で特集が組まれていた。道着姿のものもあれば、普段着のものやスーツ姿のものもあった。どれも慣れたように表情で笑顔のものもあれば、無表情やニヒルなものもあった。どこからどうみてもモデルそのものだった。


 「すごいね…………。」
 「あ、見惚れちゃった?」
 「う、うん?でも、………本当にモデルさんなんだね。」
 「モデルじゃないよ。ただの空手家。昔から出ることが多くて慣れちゃっただけだよ。目の前で自分が載ってる雑誌を見られるのには、まだ慣れてないけどね。」


 そういうと、泉は恥ずかしそうに頬をかいた。


 「そうだよね。ごめん。」


 緋色はすぐに雑誌を閉じて棚に戻した。

 隣を見ると、先程まで見ていた雑誌と同じ顔の男性がニコニコと微笑んでいる。



 緋色は自分の旦那様になるのはすごい人なのだと、改めて感じてしまったのだった。