泉は動いてもずれないようなスポーツタイプの眼鏡を選でいた。「読書用じゃなかったの?」と聞くと、「また緋色ちゃんとぶつかっても壊れないように。」と言って笑った。
 彼が選んだのは、スッキリとしたフレームがほとんどない眼鏡だった。
 泉は遠視だというから驚きだった。近くを見ると目がむずむずしてくるそうだ。遠視用のレンズをつけてもらうため、出来上がりには時間がかかる。
 その間、2人はショッピングモールを歩くことにした。


 「本当に良かったの?結構高価なものだったけど………。」
 「泉くんが気に入ったものの方がいいと思うよ。だから、気にしないで。」
 「ありがとう。出来上がりが楽しみだなぁー。」


 スキップでもしてしまいそうなほど上機嫌な泉を見て、緋色も壊してしまったものを弁償するだけなのに、何故か嬉しくなってしまう。泉を見つめながらクスクスと微笑んでいると、近くに本屋がある事に気づいた。


 「あ、小説買いに行ってもいいかな?」
 「うん。緋色ちゃんが読んでるの俺も読んでみたいな。」
 「趣味が一緒だといいんだけど………。」
 「一緒だよ。」
 「え…………。」


 断言するように言う泉に、緋色は驚き泉を不思議そうに見つめてしまう。
 すると、泉はハッとして少し焦った様子で訂正の言葉を紡いだ。


 「俺の小説が好きだってことは趣味は同じだと思わない?」
 「………そう、だね。」


 泉の説明に納得はしつつも、やはり彼の言動は昔の自分を彼は知っているように感じてしまう。

 緋色は少し考え込みながら店内を歩いてると、雑誌コーナーに目が留まった。