その後は、お土産屋でお揃いのイルカのストラップを買ったり、近くの海が見えるレストランで遅めのランチをしたりと、2人の時間を楽しんだ。

 半日でわかったことは、泉はいろんな知識を持っていて頭の回転が早いこと。そして、女性のエスコートにも慣れていること。意外にも甘いものが好きなこと。

些細な事だけれど、昨日まではわからなかったことだ。
 緋色は少しずつ泉を知れたような気がして、微笑んでしまう。



 けれど、ちょっとした瞬間に「これは恋なのか。」という疑問と「どうして彼は私の好きなものばかり知ってるんだろう。」という疑念も持ってしまうのだった。


 「あ、あれって、松雪泉選手じゃない?」
 「え………どこどこ!?」
 「ほら、窓際に席に女の人と座ってる………。」


 レストランで食後のコーヒーを飲んでいると、不意に近くの席に座る笑い女性の会話が耳に入った。その女性も驚いていたようで、声が大きくなっており、周りの人たちにも聞こえあっという間に視線が泉と緋色に向いてしまった。


 「あ………あの、なんかバレてしまったみたいだけど、大丈夫?帰った方がいいんじゃ………。」
 「あぁ、いいのいいの。俺は一般人の女性と付き合ってるって言ってるから、みんな知ってる事だしね。週刊誌に書かれる心配もないんだ。」
 「そ、そうなんだ……………。」


 何気なく言った泉の言葉。

 それは昔に、知らない一般人の彼女と付き合っていたという事になるのだろう。
 有名な選手で、容姿も性格も良いとなれば、女性にも人気があるはずだ。当たり前の事なのに、胸が痛んでしまう。そんな資格も自分にはないはずなのに、と緋色はまた塞ぎ混みそうになると、泉が緋色の手に自分の手を重ねた。じんわりと彼の熱を感じると、不思議とホッとしてしまう。