甘い言葉に緋色は更に顔や首を赤くしてしまう。これを泉に見られたら、また笑われてしまうだろうと思いながらも、彼の言葉にドキドキしてしまっている自分がいるのに気づいた。
 彼のペースにのまれてしまっているのは、わかっていた。けれど、泉が言っている「運命」という言葉が頭をちらつく。
 そういう出会いなんて、作り物の物語だけだと思っていた。けれど、もしかしたら本当にあるのかもしれない。
 そんな子どもみたいな思いを持ってしまうのだ。

 泉ならば、信じてもいいのではないか。
 彼と一緒に居れば幸せになれるんじゃないか。

 出会った瞬間に恋に落ちる。
 そんな事があるのならば、運命なのかもしれいと思ってしまう。



 『明日のデートでは、緋色さんをもっとドキドキさせるから。俺を少しずつ好きになって。』


 そんな彼からの言葉に、緋色は戸惑いを感じながらも期待が大きくなってしまうのだった。
 それと同時に彼に「昔の私を知っているの?」と聞きたいと思いつつも、それが出来ないでいた。
 
 
 自分の思い違いかもしれない。
 そう自分に言い聞かせて、緋色は泉には聞いていないのだ。
 

 昔の自分を知るのが何となく怖く思ってしまい、緋色は目を背けるのだった。