その日から、夜になると毎日泉から電話があった。
 どんな所に行きたいか、好きな食べ物は何か、仕事はどうだったか。デートの話しや世間話が多かった。その時間がくると、緋色はそわそわしまうようになっていた。その時間を楽しみにしている自分がいたのだ。




 
 「あの、明日のデートなんだけど………1ヶ所だけあるんだけど……行ってもいいかな?」


 デートの約束をしている日の前日の夜。
 いつもより少しだけ遅い時間に彼から電話があった。デートプランをいろいろ考えてくれているようで、緋色も楽しみにしていた。そのプランを途中で変えてしまうのが申し訳なかったが、どうしても行きたいところがあったので、泉にお願いすることにしたのだ。


 初めて出会ってから約1週間。
 敬語を使ってしまうこともあったが、少しずつ普通の話し方に慣れてきていた。それには、泉を驚いていたので、「一人で考えてる時の話し方をすればいいってわかったの。」と言うと、納得した様子で笑っていた。


 『行きたいところ?その場所によるけど………なるべく行けるようにするよ。ちなみに、どこに行きたいの?』
 「あの、眼鏡屋さんに行きたいの………。」
 『もしかして、あの時の俺の眼鏡の代わりを買おうと思ってる?』
 「うん。壊してしまったのは私だから。やっぱり弁償させて欲しいの。でも、眼鏡は好みもあるし、泉くんが欲しいものがいいかなって思ってて。だから、時間があったら行かせて欲しい。」
 『本を読むときぐらいしか使ってないんだけど………。でも、初めての緋色ちゃんからのプレゼントなら嬉しいかな。』


 少し迷っていたようだが、泉は眼鏡を買うのを了承してくれたようで、電話口から明るい声が聞こえた。その声を聞いて、緋色はホッした。