緋色への追求の言葉を止めたのは、後ろに立っていた泉だった。望は、緋色の事で頭が一杯になっていたのか、泉には全く気づいてないようで、声を聞いてやっと彼の方を向いた。


 「ん?………泉くん、君がどうしてここに?」
 「楪さん、すみません。連絡も出来ずに。」
 「いや、それはいいんだが。どうして、泉くんが緋色と一緒に居るんだ?」


 望は驚いたように2人をまじまじと見つめていた。父が泉の事を知っていたのに緋色は驚いたけれど、父にどう説明すればいいのかわからず、緋色は言葉を濁していた。
 そんな緋色の代わりに口を開いたのが泉だった。


 「楪さん。急なんですけど………実は、俺と緋色さんは結婚することになりました。」
 「っっ!!」
 「な、何だと………?」


 泉の言葉に、緋色も望も絶句し、驚いた顔を見せていた。
 あまりにも唐突な話しであるし、まだ緋色は結婚の事は承諾もしていないのだ。それなのに、彼は父である望に話しをしてしまった。
 緋色は、すぐに泉に駆け寄り「何で言ってしまうですか!?まだ決めてもいないのに。」と、怒った口調で言うが、「僕は決めましたので。」と、あっさりと返されてしまう。


 「そ、それに………お父様と泉さんが知り合いってどういう事なの?」
 「楪さんとは、昔からの知り合いなんだ。娘さんがいると話しは聞いていたけど………さっき、君の名字を聞いてもしかしたら、とは思ったんだけどね。」
 「そ、そんな………。お、お父様、結婚についてはまだ何も決めていないの。だから、さっきの話しは………。」