「そろそろ電車の時間だから行くね」
 「あ、うん………気を付けて帰って」
 「うん。明日、またね」
 「あぁ………勝つから必ず」


 緋色は大きく頷くと、泉の車から出て手を振りながら駅へと駆けていた。


 「可愛すぎだろ…………」


 泉は彼女が見えなくなるまで見送った後に、ハンドルに頭を乗せたたまま、大きく息を吐きながら言葉を洩らした。

 彼女と付き合いはじめてから、ますます緋色を好きになって居た。恋い焦がれていた相手と付き合えたからなのか、運命の相手だからなのか………そんな事を考えてしまうと、別れたばかりなのに、また緋色に会いたくなってしまう。


 「ダメだ。明日に集中しないと。何が何でも試合に勝たないといけないな」


 明日は緋色が初めて空手の試合を見に来る日だ。どうせならば優勝して、かっこいい所を見せたいと思ってしまうのが男というものだ。