32話「嵐の前の幸せ」



 泉は緋色と再会してから、何度となく図書館を訪れては、彼女の姿を探した。
 仕事が終わる時間はわかっていたので、その時間に毎日図書館に出向いては、彼女を待った。その図書館の雰囲気も好きだったので、空手の稽古が終わった後、図書館で白碧蒼としての執筆をしている事もあった。

 3回目に声を掛けて、ようやく近くのカフェで話しをする事が出来た。ファンタジー小説の好みは昔と変わっていなかったので、緋色と泉はすぐに意気投合した。
 好きな事を語る緋色はとても生き生きしており、笑顔がますます輝いて見えた。
 その後に連絡先を交換し、すぐにデートに誘った。緋色は今まで恋人がいた事がないと言い、とても緊張した様子だった。「自分も同じです」と伝えると、驚きながらも安心してくれたようだった。
 その日のうちに、泉は彼女に告白をした。返事は「まだ出会ったばかりだから」と、首を横に振られてしまった。
 けれど、それで諦められるような恋ではないのだ。泉は、その後も何度も何度も彼に想いを伝え続けた。