望とは連絡を取っていたため、すぐに彼女の住んでいる場所や会社を教えて貰う事が出来た。望は泉の頑張りや活躍を見ており、すぐに認めてくれたのだ。
 しかし、予定外の事もあった。それは、緋色の母親である茜が亡くなっていた事だった。そして、彼女は緋色の事をとても心配しており、彼女に事件の事を明らかにするのを止めて欲しいと訴えたのだ。緋色が20歳になった時に話をするとなっていたが、事件の事をすっかりと忘れて幸せに暮らしているのに、何故苦しめるような事をしなければいけないのか、と言ったという。そんな言葉を残して、茜は亡くなってしまい、望はどうするかを迷ったそうだ。


 そして、緋色には何も伝えないことに決めたのだ。望は彼女を支えて行くのが自分だけになり、自信がなくなってしまったとも話しをしていた。


 その話しを聞いても、泉は仕方がないことだと思っていたし、茜の考えもわかった。
 自分は、初めて会う人として緋色と再会すればいいだけの事なのだ。

 緋色には嘘をつくことになる。
 思い出がなくなったことになる。

 けれど、緋色の笑顔が守れるのなら、それよりも大切な事はないと思った。