その話しを大きくなってから聞かされた泉は、彼女がそんな事を思い出してしまったら、苦しむだけだとますます悲しくなった。
 ならば、自分との記憶がなくなったのならば、また新しく緋色と出会えばいいだけだと思うようになっていた。

 
 泉は10代後半で作家デビューをしていた。白碧蒼として本を出し、ファンタジー小説としては異例のヒット作品を出した。けれど、その白碧蒼は誰なのかは一切明かさないという条件でのデビューだった。そのミステリアスさからも注目を浴びた。
 そして、空手の腕前もすぐに確立していき、小学生の頃から全国大会から連続優勝していき、選手としても一躍有名になった。容姿端麗だったためメディアにも少しずつ注目された。けれど、泉はその頃はあまり有名になりたくなっただめ、極力メディアに露出はしないようにしていた。もちろん、それは緋色のためでもあった。
 けれど、泉は大学にもしっかりと通い、自分の知識も蓄えていった。

 大学を卒業する頃には、地位も財力もそして強さをもその年代としては十分過ぎるほど持つことが出来るようになっていた。

 そして、22歳になり自分に自信が持てるようになった時、泉は緋色を訪ねる事に決めた。