自分より背が高い女の子。そして、頭もよくて本が大好きで、みんなが憧れるような性格で、泉にとっては高嶺の花だったかもしれない。
 それならば、自分が頑張らなければならない。
 ずっとここまで一緒に居て、これからも彼女の笑顔を見たいと願ったのならば、自分が守っていきたいと強く思った。


 「……………緋色ちゃん。大人になったら会いに行くから。だから待ってて」
 「………っっ!うん、泉くんが来てくれるの待ってるね。そして、手紙も書くからね」



 泉が思いきって言葉を掛けると、緋色は満面の笑みを浮かべ、目には涙を溜めながらとても嬉しそうに笑った。
 それを見て、泉は「絶対にかっこいい大人になって迎えに行く」と心に決めたのだった。


 結局、別れる時は2人共わんわんと泣いてしまった。車に乗せられ、見えなくなるまで手を振ってくれていた緋色を、泉はいつまでも見つめていた。


 その時、緋色は11歳、泉は6歳だった。




 それからと言うもの、泉には緋色から毎月贈り物が届いた。
 中身は自分が読み終わったファンタジーの物語の本だった。そして、それには必ず手紙も同封されていた。
 近況も書いてあったけれど、泉を心配する言葉と本の感想だった。泉はそれがとても楽しみになっており、それを見ていると、勉強を頑張ろうと思えた。


 けれど、彼女からのプレゼントもしばらくすると届かなくなってしまう。



 ある事件が緋色を襲ったからだった。