28話「悲劇からの出会い」





 人は嫌な事を忘れていかなければ、生きていけないという。
 けれど、本当にそうなのだろうか?と緋色は思っていた。

 楽しかった事は忘れてしまうのに、悪いことはフッとした瞬間に思い出す事が多いように感じる。
 それは、緋色だけなのだろうか。

 けれど、記憶を思い出してみて、緋色は始めてこの考えは正しいとわかった。

 思い出した時に自分を傷つけないように、緋色は自分の記憶を消して行ったのだろう。


 思い出した過去は、思い出したくなかった思い出だったかもしれない。


 けれど、それだけではなかった。

 辛い思い出もあるけれど、大切な思い出も沢山あるのだとわかったのだ。