それに気づき、緋色は自分の考えが恥ずかしくなり顔を赤くした。先ほどまで、結婚の事など考えられない、冗談だと思っていたのに。
 

 彼に優しくされたから?
 彼が白碧蒼だったから?
 彼がかっこいいから?
 それとも、妙に懐かしさを感じる不思議な存在だからなのか?


 今の緋色にはわからなかった。
 けれど、気になり始めているのは、自分でもわかっていた。


 「それなら、結婚して貰えますよね?あなたもお見合いから逃れられて、君のご実家にも損はない。それなら………。」
 「まっ、待ってください。………どうして、そこまで、私と結婚したいと言ってくれるのですか?全くメリットがわからないんです。」


 彼の言葉を遮ってそう言うと、泉は「あぁ、なるほど………。」と言い、少し考えた後に、ゆっくりと口を開いた。


 「………そうですね。………俺は小説を書いているので、ネタになるかなって思ったんです。」


 笑顔でそういう泉の言葉に、緋色は大きな衝撃を受けてしまった。



 何故か泣き出しそうになったのを、緋色は必死に顔に出ないようにと我慢して、「そう、ですか……。」と、固い表情のまま微笑するのが精一杯だった。