「ち、違います!香水を買いに来ただけです」
「またまたー!ここに来る奴でまともな奴なんていないよ」
「本当ですっ。離してください。」
緋色が必死に抵抗しても、相手は全く怯まなく、面白そうにニヤニヤしているだけだった。
すると、路上に駐車していたワンボックスカーが開いて、別の男性が顔を出した。
夜なのに真っ黒のサングラスをしており、髪は短髪で金色に染めている。緋色の肩を抱いて離さない男より強面で、体をがっしりとしていた。
「おまえ、何やってんだよ。どう見ても、俺たちの客じゃねーだろ」
「あ、やっぱりそうかー」
「あの………離してください」
2人の話を聞いて、勘違いなのが伝わったのかと思い、緋色は銀髪の男の体を強く押した。
けれど、何故かその男は先ほどよりも強い力で緋色を抱きよせてきた。
男に更に近づいてしまった時、鼻を刺すようなツンッとした臭いを感じた。
この人から離れなければ…………。
そう思ったけれど緋色は、恐怖からか体か震え出してしまう。
「でも、俺の好みのタイプなんだよね。お姉さん、俺と楽しいことしよう。………あ、結婚してんだ。でも、大丈夫。俺が、旦那より最高に気持ちよーくしてあげるから」
左手の指輪に触れながら、甘くて冷たい言葉を耳元で囁かれ、緋色は声にならない悲鳴を上げた。
けれど、路地裏の小さな道には、他に誰の姿もなかった。