「探したんだよ。残業するからって連絡が来たから、その時間に迎えに行ってもなかなか出てこないし、君とは連絡もつかない。会社の人に聞いたら緋色ちゃんは定時で帰ってるって聞いて驚いたよ」
 「………ご、ごめんなさい」


 緋色は自分が待ち合わせしたことを忘れて、勝手に帰ってきてしまったのだ。彼が心配するのも当たり前の事だろう。

 泉が心配して、近づき緋色の顔を心配そうに見つめた。緋色が戸惑い、紙袋をギュッと握りしめながら、彼を見つめる。


 「………君が無事ならいいんだ。家に帰ろう?」
 「………っっや!」


 彼の手が伸びてきて、緋色の腕を掴もうとした。それを怖いと思ってしまった緋色は、咄嗟に彼の手を払ってしまった。
 そして、手に持っていた紙袋もその拍子に離してしまい、地面に落ちしてまった。パリンッというガラスの割られる音もした。それと同時に噎せ返るような甘い香りが辺りに漂う。