夢の中で緋色はまた昨日と同じ夢を見た。
 真っ暗な部屋に独り座り込み、ゆらゆらの揺れる小さな火を見つめ、部屋の鳴り響く時計の針が時を刻むのをただ聞いていた。
 何が怖いのかはわからない。
 けれど、怖くて震え涙が出てくる。
 早くここから出たい。
 出ないと酷い事が起こる、と頭では思っているのに、その場から逃げられないのだ。


 喋ることも出来ずに、ただ震えている。
 こんな夢なんて、見たくない。
 早く目を覚ましたい。


 でも、どうやったら起きれるのだろうか。
 やっとの事で口を開けて、叫ぼうと思った時だった。



 「緋色ちゃんっ!?起きてっ!………大丈夫だからっ!」
 「はっっ………っっ………。」


 泉の声が聞こえて、緋色はパチッと目を覚ました。
 すると、眩しいぐらいの太陽の光と、愛しい彼の顔が目に入った。


 「泉………くん?」
 「よかった……今、うなされていたから心配したんだ。また、昨日みたいに何か思い出したの?」

 
 泉は緋色の体を起こしながらそう質問してきた。彼の体に支えられながら起きると、いつもの甘い香りがする。この香りを嗅ぐだけで、緋色は落ち着けるような気がした。