24話「嘘と夢」




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 「はい…………今は落ち着いて眠っています。また、何かありましたら連絡します。すみません、失礼します」


 リビングで電話をしていた泉は、相手が通話を切ったのを確認してから、スマホをテーブルの上に置いた。

 はーっと深いため息を落としてから、泉は立ち上がり寝室へと向かった。音を立てないようにドアを開ける。サイドテーブルにある間接照明だけがついた寝室に入ると、まだ緋色は起きていないようで、すやすやと眠っていた。

 泉はゆっくりとベットに近づき、膝をついて座り彼女の寝顔を見つめた。緋色はとても穏やかで落ち着いているようで、泉はホッとした。


 「ごめんね、緋色ちゃん………また怖い事を思い出させちゃって。俺がしっかり確認しなかったから」


 小さな声で寝ている緋色に謝罪をする。もちろん、彼女に届くはずもない。けれど、寝ている時でないと謝れないのだ。泉は、緋色の左手を両手で優しく包む。緋色の薬指にある指輪だけが冷たかった。


 「君を守るって決めたんだ。もう、緋色ちゃんを苦しめるものから絶対に守りぬくから。だから………」


 苦しげに声を出し、泉は緋色の左指にそっと唇を寄せた。


 「もう苦しいことは忘れてくれ。思い出さないで………」


 願い事を言うかのように、泉は目を瞑り祈りながらその言葉を残した。