23話「異変」





 結婚式も終わり、緋色の生活も少しずつ日常に戻ってきていた。
 2人での生活にも慣れてきて、緋色が体調を崩すことなく過ごしていた。

 変わったことは、少しずつ緋色から泉に甘えられるようになってきた事だった。
 彼が空手の試合などでいない事もあり、寂しくなると自分から言葉や態度で「寂しいから一緒に居たい」と伝えられるようになっていた。
 それは、そう伝えた時に泉が喜んでくれるから言いやすいというのが大きいと緋色は感じていた。
 忙しい時や疲れてる時に「寂しい」と言われても、余裕がなければどんなに愛している人でも、それが嬉しいと思えないだろう。けれど、彼は違った。


 「ごめんね。休みの日は一緒に過ごそうね」と、優しく言って頭を撫でてくれたり、抱きしめてくれたりするのだ。それが嬉しいけれど、不安になり「鬱陶しくないの?」と泉に聞いたことがあった。けれど、彼は「なんで?俺と一緒に居られないから寂しいなんて、嬉しい事じゃない?」と話してくれたのだ。
 そんな一言で不安もなくなり、彼からの愛情を感じてしまうのだ。
 緋色の方こそ、彼にどっぷりと愛してしまっていた。