「ごめん………始めに謝っておくね。俺、余裕なくなってるから。緋色ちゃんが欲しくて仕方がない。………だから、全部頂戴?」
「…………泉くん」
「イヤだったら言って。頑張って止めるから。でも、緋色ちゃんも俺を求めてくれるなら、俺はもう止めたくないんだ。やっと、手に入れたんだ。俺だけのものになったんだ。それを確かめさせて」
泉は切なき声でそう言うと、緋色の返事を待ちながら頬を撫でたり、髪に触れたり、首筋に唇を這わせたりと、緋色の体温を更に高めていく。
その言葉の返事は決まっている。
緋色は月の光でうっすらと見える彼の頬に手を伸ばした。
「泉くんと一緒の気持ちだから。だから………止めなくていいんだよ。でも、記憶がなくて、その………こういう経験があるかわからなくて。だから………」
緋色が不安な気持ちを伝えると、泉はフッと優しく微笑んだ。それは、いつもの彼の笑顔だった。
「大丈夫。大切にする、から」
「………うん」
緋色の唇に短くキスをした。
それが甘い時間の始まりの合図だった。