レストランを出て部屋まで戻る間は、鼓動がとても大きく感じた。耳が震えるぐらいに鼓動の音が大きく感じてしまい、緋色は自分が緊張しているのがわかった。
 緋色の手を握っている泉の手もとても熱く、彼もきっと同じ気持ちなのだとわかると、少し安心する。
 

 部屋のドアを開けて、泉が部屋へと促してくれる。パタンッとドアが閉まると同時に後ろから彼に抱きしめられ、そして後ろを向いたままキスをされる。泉にゆっくりと体の向きを変えられ、向き合うように体をくっつけた。キスは先ほどよりと深くなり、彼の舌が甘い誘惑をくれる。長くキスを続けただけで、頭がボーッとしてしまう。
 やっと、離された彼の唇は薄暗い部屋の中でも、濡れているのがわかり妖艶さを感じさせた。

 もっとその唇でキスをして欲しい。
 そんな気持ちで泉を見つめると、彼の瞳が揺れるのがわかった。


 「そんな風に物欲しそうな顔をされたら………堪らないよ」
 「え…………」
 「沢山しよう。キスしたいんでしょ?」


 泉には自分の気持ちなどお見通しなのだとわかり、緋色は恥ずかしさを感じながらも素直に頷く。すると、泉は緋色の手を取ってゆっくりと歩き始める。
 泊まる部屋はトイレやシャワー室の他に一部屋だけだったが、とても広い空間だった。
 大きな窓からは、夜空を映し出す湖と、明るい月が見えた。窓の傍には多きなベットがあり、その隣に立つと泉はふわりと緋色を抱き上げた。

 そして、ふかふかのベットに体を倒すと、緋色を覆うように体を跨ぎ、そしてまたキスを落とす。彼のキスで頭が枕にゆっくりと沈んでいく。息が出来ないほどのキスで、緋色はますますボーッとしてしまう。彼のキスに翻弄され、やっと唇が離れたと思い、荒く呼吸をしながら泉を見ると、いつもの優しい笑みはそこにはなかった。
 ギラギラした瞳で、泉を重い視線で見下ろしている。