彼の腕の中で、どうしていいのかわからずに目をキョロキョロさせたり、彼の服を握りしめてしまっていると、そんな緋色の様子に気づいた泉がフッと微笑んだ。
 そして、緋色の前髪の上から額に小さなキスを落とした。



 「大丈夫だよ。今日はしない」
 「………え」
 「でも、結婚式の後は覚悟しててね。楽しみに待ってた分、君を沢山感じたいから」
 「っっ!」
 

 焼けるように頬を赤くする緋色に、泉は楽しそうに笑いながら顔を近づける。


 「だから、今日は沢山キスをしよう。それで我慢するから。………緋色ちゃんも、我慢してね」
 「…………うん」


 緋色も彼を求めていた事をわかっていたのかと思うと、羞恥心を感じてしまうけれど彼と一緒だと思うと嬉しくなるから不思議だ。

 早く泉を深く感じたくて、彼の唇の感触を待ちながらゆっくりと瞳を閉じた。


 静かな夜に、お互いの名前を呼ぶ声と、荒くなっていく吐息、そして水音が響く。

 何度も何度も重なりあう唇は、ぬるりとした感触になり緋色は、全身がぞくりと震えた。

 そんな感覚さえも幸せを感じ、緋色は彼の肩をしっかりと掴んで、この甘い時間がもっともっと続くようにと、彼を求めたのだった。