すると、泉は片手で緋色の体を支えながら、自分の顔を手で覆った。そして、「それは反則だよ………」と、呟いたのだ。

 そして、手を口元にずらす。すると彼の頬が真っ赤になっているのがわかった。


 「緋色ちゃん………今のはずるいよ」
 「ず、ずるい……?」
 「俺は緋色ちゃんが好きって言ってくれるまで待つつもりだったし。………結婚式までは我慢するつもりだった。けど、君も好きになってくれたのなら、欲しいって思っちゃうよ。今の君は特別に可愛すぎる」
 「………ぇ………」


 緋色だってもう大人の女。
 彼の言葉の意味をわからないほど幼稚ではなかった。彼の腕の中で逃げ場もなく、緋色は真っ赤になったままに彼の顔を見つめる。
 お互いに照れ顔で見つめ合い、まるで学生の恋愛のようだった。そんな初々しくも、甘い雰囲気に、緋色は嬉しくなりつつも戸惑っていた。


 「………そんな顔しないで。決心が鈍りそうだ」
 「あ…………」


 緋色の顎に指を置き、泉は熱を帯び潤んだ瞳で緋色を見つめていた。
 このまま彼にキスをされてしまえば、きっとそのまま全てを彼にあげることになる。
 それが嫌なわけもなく、好きだと思った相手と触れ合いたいと思うのは、男女も同じはずだった。

 けれど、緋色は思いもしない告白で、想いがやっと通じあった夫婦になれた。
 それだけでも急展開なのに、さらにそれ以上の事になると頭がパンクしてしまいそうだった。

 
 だが、彼の誘いを断るのも悪いし、もっと泉とくっついていたいのも本心。