「緋色ちゃんが見たのは、俺の空手の後輩だよ。稽古をしている道場の後輩で、俺が育てたような子なんだよ」
 「………あの子、空手やってるんだ」


 人は見かけによらぬもの、とは言うがまさしくその言葉通りだった。緋色が見た女性は髪は明るい色に染めており、メイクも服装も派手めのものだった。空手をやっている人のイメージとは合わなかったので驚いた顔で泉の顔を見ると、「空手をやっていても、髪を染めてもメイクをしてもいいんだよ。俺はまぁ、元からこの色だけど、今はそういう人も多いんだよ」と教えてくれた。


 「相談したいことがあるからって、急遽会うことになってあの日に待ち合わせしたんだ。話しは空手の事だよ。あの子は恋より何より空手が好きでね。メイクとかも好きみたいだけど。だから、俺と会えて嬉しいってよりは、空手の話が出来て嬉しいって笑顔だと思うよ」
 「………そうだったんだ………。私の勘違いなんだね」


 緋色は自分が勘違いをした上、勢いで告白までしてしまった。
 それがとても恥ずかしくて、俯いてしまう。それを見て、泉はクスクスと笑いながらも、「その勘違いのお陰で、両想いになれたから俺は嬉しいけどね」と、言った。