20話「求める唇」



 泉は、緋色を抱き上げる。
 鍛えている体なので、緋色ぐらいの体重はすぐに持ち上げられるようだった。
 彼の膝の上に座らされ、そしてそのまま腕の中にすっぽりと埋まってしまう。

 その安心感から、緋色はゆっくりと涙が止まっていく。


 「緋色ちゃんの方から、好きって言って貰えるなんて………。本当に嬉しいよ」
 「待って………。その、一緒にいた女の人の事。教えてほしい」
 「そんなに気にしてたんだね。もちろん、話すよ」

 
 泉は緋色の眦についた涙を人指し指ですくい取ると、苦い顔をしながら説明をし始めた。緋色は彼の胸に頭を預けながらその声を聞いた。
 男らしい少し低い声。けれど、明るさもある、緋色の好きな声を。