「………泉選手が大好きなんだね。」
 「………わ、私がですか?」
 「え………?」
 「え、あ………大好きですよ。泉くんの事!」


 焦って返事をする緋色を見て、不思議そうにしていた愛音だったが、「まぁ、頑張って。旦那さんを信じなきゃダメだよ。」と言ってくれた。


 愛音に言われて、思わずドキッとしてしまった。
 緋色は何故彼と他の女性が一緒に居て、悲しくなったのか。そして、その女性と自分を比べてしまったのか。
 そんな事は考えもしていなかった。

 けれど、その気持ちにぴったりの言葉を緋色は知っている。


 「嫉妬」だ。


 それを理解した瞬間に、緋色は顔が真っ赤になった。



 「私………泉くんが好き………なんだ。」


  
 言葉にしてしまうと、それは緋色の心にすっと馴染んでいた。
 きっと少し前からその感情はあったのだろう。それに、緋色が気づかないようにと心に蓋をしてしまっていた。
 けれど、その気持ちに1度気づいてしまったら、もう変えられない。



 緋色は定食屋で真っ赤になりながら、しばらくの間、呆然としてしまった。