マイナスに考えてしまうの悪い癖だ。
記憶がなくなってしまい、不安になってしまうのを理由にして、緋色はいつも他人の顔色を伺ったり、自分に自信がなかったりしてしまう。
それは緋色自身でもわかっている事だった。
けれど、すぐにその性格を変えられるのならば、今こんなにも悩んでいないだろう。
緋色はとろとろの卵を少量すくって、口に入れた。出汁が聞いて、ほんのり甘い味が口に広がる。それだけで、少しだけ安心する。そんな温かみのある味だった。
「緋色ちゃんは、泉選手に選ばれたんだよ!それは変わらない事実。そして、泉選手のお嫁さんは緋色ちゃん。それも変わらない!だから、思い切って聞いてみたらいいんじゃないかな。泉選手は、しっかりと答えてくれるはずだよ。」
「………そうでしょうか………。」
「それとも浮気をして逃げていくような男の人なの?」
「そ、それは違いますっっ!!」
思わず食具を置いて大きい声で反論してしまい、緋色はすぐにハッとして両手で口を塞いだ。けれど、すでに遅く周りのお客さん達は何事かと怪訝な表情で緋色を見つめている。緋色は、「すみません………。」と、周りにお辞儀をしながら迎えに座る愛音を見ると、ニヤニヤと笑っている。