俺、桜木瑞希が初めて先輩と出会ったのは4月の下旬頃。

場所は図書室。




うるさい女達を無視して気になる図書室に行くと、超絶美人がカウンターにいた。

周りはあまり人がいなくて静か。

でもみんな遠巻きに彼女を見ている。

彼女は気づいてないのか椅子に座って黙々と小説を読んでいた。

読む姿も凛々しかった。

背中をピンっとのばして姿勢の座り方。

さらっと流れ落ちる長くて艶やかな黒髪をゆっくりと耳にかける仕草。


今までこんな美人に遭遇したことない。

図書室に置かれている本はどれも俺が好きなジャンルばかり。

続きが読みたかった小説があったので借りるため、カウンターに向かうも彼女は気づかない。

「あのぉ。」

っと声を掛けると彼女はビクっと肩を震わせて、俺を見ると慌てて立ち上がった。

「あぁ。ごめんなさい。気づかなくて。」

「いや……。」

俺が借りる本を見るなり目を見開いて輝かんばかりの笑顔を向けた。

ドキンっと胸がなった。

「この本好きなの!?」

「は、はい。」

「いい話しよねコレ!好きすぎてリクエストして買ってもらったんだけど、読む人全然いなくて。嬉しい好きな人がいて!ねぇ誰が好き?どの巻が好き?」

物凄い勢いで話し出すから驚いた。

静かな人かと思ったら結構ハキハキしていて明るかったから。

ハッとしたように彼女はどんどん笑顔がなくなり、気まづそうな顔になる。

「ご、ごめんなさい。私、小説のことになるとどうしても、周りが見えなくなってしまうから。」

遠巻きに見ていた奴らも少し驚いた顔をしてコチラを見ていた。

多分彼女は基本あまり笑わないのだろう。

たがら先程の彼女を見て驚いたんだ。

そんな彼女がなんだか可愛らしく思い、またもっと話したくなった。

「俺、このシリーズだと6巻が好きです。主人公の相棒の過去が明らかになったシーンが印象的だったから。」

俺が話すと思ってなかったんだろう。
目を丸くして俺を見ると嬉しそうに笑って、無邪気に話し出す。

「私も大好き!意外だったよねぇ。予想外だったもん。」