「……先輩?」

「……へ?」


「どうしたんですか?何か思い詰めた顔してますけど。……嫌でした?」


「……ご、ごめんなさい。」

「謝らなくていいですよ。無理しなくていいですから。」

少し悲しげだけど優しく笑って私から離れる彼を私はしがみつく。

「ち、違うの。そうじゃなくてその……。」

必死な私を見て瑞希くんは私の頭を優しく撫でてしっかり目をみる。

「慌てないで……ゆっくり、話して下さい。先輩は何に悩んでいるんですか?」

私の両肩に手を置いて真っ直ぐに見つめて来る切れ長の瞳。

深呼吸して目を閉じてから目を開けてゆっくり話し始める。

「……私、瑞希くんが好き。私を求めてくれるのも……その……凄く好き……。」

……恥ずかしいな……改めて話すと。

瑞希くんは少し驚いた顔をしたけどとても嬉しそうに笑った。


「瑞希くんは今まで女の子と付き合ったことあるだろうし、経験豊富なことを攻めてる訳じゃないの。仕方のないことだから。」

「…え?ちょ、ちょっと待って下さい。先輩、俺のこと今までそういうふうに思っていたんですか?」


少し混乱したような表情で私を覗き込む。


過去のことなんだから気にしても仕方がない。

頭では分かっている。

理解してるのに。

嫌なんだ。

こんなにも、瑞希くんを好きになってしまった。


今まで募っていた事が爆破した。

「だ、だって、凄く……上手だから……それ、で……その、したことあるのかなって思うと、凄く嫌で……。」