私は慌てて居間を出て

2階に上がると

お母さんが寝ている横を静かに通って

ベランダに出た。

「寒っ!!」

部屋に戻りたかったけど

着信が鳴りっぱなしで


とりあえず出よう。
覚悟を決める



「…もしもし…?」

声が上ずる


どうしよう…緊張でどうにかなりそう。


「和美?」

「うん…」


「あけましておめでとうございます(笑)」

「あっ…おめでとうございます…」


「なにしてんの?」

「下田に来てて…おばあちゃんの家に。」

「そーなんだ?下田いいな〜」


修司君の声は


泣きそうなくらい

優しい…


低くて

あったかい。


「修司君は…? なにしてる?」

「俺今帰ってきたところ!大晦日のあの時からさっきまで、ずっと飲んでてさ、やっと解放された」

「え〜!?ずっと?!」

「ずっと(笑)ずっと(笑)毎年そうなんだよ」

「お疲れ様です…眠い?」

「眠い…辛い(笑)」


「…………電話……あの…えっ…と…」


「ん?」

ヤバい!!

今の ん?  って


めちゃめちゃ好き(泣)


「もう、寝たほうがいいね…?」

話したい

でも

寝てほしい



「ん〜…あと10分」



ヤバい

どうしよう…


可愛いんですけど!!


あの風貌からは想像できないくらいの

甘い声は


私の心を鷲掴みにした。

「うん…あと10分…」



好き

好きって気持ちしかないよ