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私は朝から荷造りに追われていた。

私のお母さんの実家は伊豆の下田で

海が見える山の上に今はおばあちゃんが一人で住んでいる。

お母さんは年末から一週間くらい帰ってしまっていたけど
私はピアノの練習をしたいから2泊3日。

今日から明後日までの滞在になる。

もちろん、今日は行く前に1時間半練習をする予定。



正直、荷造り もピアノの練習もうわの空

だって

大晦日の夜

信じられないことが起こったから…


ラインを交換してから
二人で30分位かな…
話をした。


修司君のいろんなことを

知った。

左官という仕事をしてること。

週末は大体飲みに出てること。

いきつけの店は後輩のダイスケ君という人ががやってる居酒屋で



彼女は…いないっぽいこと。

はっきりそう言ったわけではないけど


いないみたいだった。


手筒花火を担いでた顔とは別人の

とても優しくて照れたような笑顔が

私をドキドキさせた。


あまり目を合わせないシャイな一面も

私にはすごくカッコ良く見えた。


あんなに距離を感じたのに

二人きりのあの瞬間は

なんだかとても
近づけた気がした

もっとずっと一緒にいたかったけど

修司君の電話が鳴って

「行くか!」


立ち上がった修司君の後ろを

名残惜しい私はゆっくり歩いた。


また 会いたいな


また話がしたいな


そんな気持ちを吹っ切るように

「よいしょっ」

小さめのボストンバッグを肩にかけて

家を出た。