ユウキ君のお兄さんは驚いた様子で私を見た。

私は軽く会釈をする。
内心ドキドキが止まらないのを必死で隠した。


「和美知ってるの?」


マリがそう言って

「この間うちに来た時に会ったんだよ。お前ら酔っ払ってたから知らないだろうけど」

ユウキ君がすかさず答えた。

「そうなんだよ。」

私は苦笑い。


「修ちゃん、誰???」

周りにいたヤンキーっぽい男の子たちが

私達をニヤニヤジロジロ見ている。


こ…怖い…

「ユウキの連れ。お前ら手ぇ出すなよ。」

お兄さんはぶっきらぼうにそう言って

一番やんちゃそうなロン毛の男の子を一瞬睨んだ。


ロン毛の男の子はそれでもおかまいなしって感じで
私達に近付いてきた。


「ねぇ?名前教えて!」

いきなり肩を組まれる。



えっ……!?


私は恐怖で固まってしまう。

「可愛い〜!緊張してんの〜?」

私を覗き込んだ顔が

今にも触れてしまうくらい近い




「まじでやめろ!!」

そう言って

「痛っ!痛たたた!!痛いって!!!」

お兄さんが私の肩にかかった男の子の腕を無理やり引き離して上の方に捻じ上げた。

「痛った〜〜!!修ちゃんいてぇよ〜……」


男の子は拗じられた腕と手をさすりながら、座っていたパイプ椅子に戻って行った

「ありがとう…」

私が小さくそう言うと


「ん!」

ぶっきらぼうに

お兄さんは
何かを差し出した。


ん?


私も反射的に手を出すと


ポンッ


冷え切った手が一瞬で熱を帯びた


「熱っ……」


思わずそう叫んだ。


手の中には


缶コーヒーが2つ


「あそこでぐつぐつ煮てたからあちいぞ」


遠くにある石油ストーブを指差してちょっと笑った。

私も思わず笑ってしまう。

「………ありがとう…」

嬉しくて

お兄さんを見上げた私と


目が合った


「おぅ」

お兄さんはちょっと照れ臭そうに目をそらした。

ドキドキが加速する

体がフワフワして
熱くなる


どうしよう


嬉しいよ


私は幸せを噛み締める


あ、

2本のうちの1本をマリにあげよう、

そう思って

目線をお兄さんからマリにむけた



その時