「まったくもう信じられない!
人が良いのもたいがいにして下さいよ。
実の娘に、そんなお見合い話を持って来るなんて……
それに、芹香…あんたもあんたよ。
なんで、そんなお見合いをするっていうの!?」

しばらくしてから、お母さんと妹が帰って来て…
お見合いの話で、お母さんは酷く憤慨していた。



「そりゃあまぁ、確かに訳ありだ。
だけど、女性に興味がないこと以外は、すべてが完璧と言って良い程の人物なんだぞ。
しかも、芹香はお前も知ってる通り、とんでもない面食いだ。
そんなことばかり言っていたら、結婚なんて出来る道理がない。
僕達だって、いつまでも芹香の傍にいてやることは出来ないんだぞ。
芹香が将来一人ぼっちになって、寂しく孤独死なんてことになったら、その方が辛いじゃないか。」



おいおい…野垂れ死にの次は孤独死ですか。
お父さん、私のことを一体どんな風に思ってんのよ。



お父さんの話に、お母さんは何かを考えるようにしばらく黙ってて…



「言われてみれば確かにそうね。
たとえ、ただの同居人だとしても、誰かが傍にいてくれた方が良いかもしれないわね。
でも、問題はお相手の人間性ね。」

「その点なら大丈夫だと思う。
会長も穏やかで良い評判の人だし、息子のことで悪い噂を聞いたこともない。」

「そこは、やっぱり会ってみないとわからないわね。
私の目は誤魔化せないわよ。
だてに長い間客商売やって来たわけじゃないんですからね。」

結局、二人とも、私のことを一生涯独身だと思ってたわけね。
それは酷いけど、私のことを想ってくれてるのも本当みたいだから、文句は言えないか。