愛するオトコと愛されないオンナ~面食いだってイイじゃない!?





「今日は疲れただろう。」

「い、いえ…とても楽しかったです。」

「そうか、それなら良かった。」



結婚式が終わって…両親とお茶を飲んでゆっくりした後、私と柊司さんは、ホテルの部屋に向かった。
明日の朝、ハネムーンに出かけるため、今夜はここでお泊り。
生まれて初めて泊まるスイートルームだ。
部屋がいくつもあること自体びっくりだけど、そのひとつひとつがこれまた豪華なもので。
キラッキラのシャンデリア…ふかふかのソファー、そして、寝室のベッドはキングサイズ…
それを見たらちょっと恥ずかしくなったけど、私と柊司さんの間には、愛がないから何もない。



初日から、そんなことで落ち込んでたらどうにもならない。
それはもう最初から言われてることなんだから。



でも…どうするんだろう?
愛がないから、やっぱり同じベッドには寝ないのか、もはやそんなことは了承済みだから、隣に寝ることくらいなんともないのか…



「どうかしたのか?」

「えっ?あ…あの…」

柊司さんは、寝室の扉の前で立ち止まってる私の頭越しに、中をのぞいた。



「……なるほど。ベッドで悩んでいたのか。
心配はない。
僕はゲストルームのベッドを使うから、君はここを使ったら良い。
このベッドなら余程寝相が悪くても大丈夫だな。」

そんなことを言って微笑む柊司さん…あぁ~…なんて美しい…
毎日、こんな調子で大丈夫なのかな?
私、幸せ過ぎて、とろけてしまわない?



今日までの間、いろんな用で柊司さんには会ったけど、柊司さんって本当に頭が良いんだよね。
今みたいな感じで、私が説明しなくてもなんでもわかるみたい。
きっと、仕事も良く出来るんだろうね。
それに、本当に優しい。
感情的になることがないし、良く笑う。
顔が綺麗な人は、性格に難がある場合が多いと思ってたけど、柊司さんには悪いところがどこにもない。
親孝行でもあるし、真面目だけど冗談も言うし…
今のところ、おかしな癖もなさそう。
こんな完璧な人がこの世にいたなんて…
そして、私と結婚したなんて、今でもなんだか信じられない気分だ。



「あ、こっち来てごらんよ。
夜景がすごく綺麗だよ。」

「は、はい!」

手招きされて、広いバルコニーに出てみれば、そこはまさに光の宝石箱。



「綺麗だね。」

「はい、とっても…」

「寒くない?」

「はい、大丈夫です。」



もう~、そんなに気を遣わないでよ。
優しすぎて、ますます好きになってしまう。



夜景を眺めていたら、ふとおかしな気分になった。
こんな素敵なイケメンと、こんな素晴らしいスイートルームにいて、のんびり夜景を見てるなんて…
これって、もしかして長い長い夢なんじゃないだろうか?
だって…私、ごく普通の子だよ。
知能も見た目も極めて普通。
今まで特別良いこともなかった。
一番良いことは、5000円のクオカードが懸賞で当たったことくらいかな。
そんな私が、どうしてこんな素敵な人と結婚して、一緒に夜景なんて見てるんだろう?
私は、無意識にほっぺたをひねりあげた。